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不自由さの楽しみ [ぶつぶつ]

同期会で新宿に行き、西口のヨドバシカメラをうろうろしていた時の話だ。

入口近くでカメラの宣伝イベントをやっていたので、ちょっと覗いてみた。最近流行りのミラーレス一眼という、小さなデジタルカメラと、昔からの一眼レフカメラの、合いの子のようなカメラだ。俳優の「向井理」くんが探偵みたいな恰好をしてCMしている、PENTAXのQ10だ。

カメラも小さくなって、というか携帯電話の中に組み込まれるのが当たり前になって、オートで気軽に写真が撮れるようになった。iPhoneの内臓カメラもきれいな写真が撮れ、ブログ用には重宝しているが、レンズ絞りによって被写体深度を変えたり、動きのあるものに合わせてシャッタースピードを選ぶなんてことは出来ない。最近はあまり聞かなくなったが、いわゆる「バカチョンカメラ」だ。

このQ10は「ミラーレスデジカメ」で、レンズが交換できるし、絞りやシャッタースピードの設定もマニュアルで出来るから、ちょっと凝った撮影も出来て、かつ、小型で持ち運びやすいというのが売りらしい。

急速に携帯電話に取って代わられたデジカメ業界が巻き返しに選んだのが、このミラーレスデジカメで、各社とも新製品を投入し、この冬の注目アイテムになっている。

でもねぇ、このQ10、小さ過ぎるのだよ。

向井くんがパッとジャケットを開くと、中に幾つもレンズが装着してあって、それを交換できるのは恰好が良さそうに見えるが、普通はしない。だいたい、小さいから絞りやシャッターの設定も指先を伸ばしてするから、まるで、昔の「マッチボックス」という自動車のおもちゃを触るような気持ちになる。

確かに小さくて軽いのは楽そうだけれど、人が使う機械には、操作する人間の体とのバランスから適度な大きさというのがあって、ちょっとこのQ10はやり過ぎだと思うのだ。便利さを突き詰めるのはエンジニアリングの常道だろうが、趣味の世界は、ある意味その不自由さに、面白さや奥行きがある。

便利にして失われてしまうものもあるのだ。

重たいカメラを首から下げて歩き、冷たい中で被写体へレンズを向け、明るさや被写体から露光条件を決め、最後にシャッターを押す。うまく撮れたかどうかは、家に帰って現像に出し、数日後にプリントされて初めて分かる。写真マニアは、皆、そんな感じだった。考えてみると、不自由極まりないし、「小さくて便利なら、いいじゃないか」という声が聞こえてきそうだが、僕には、そんな不自由さの中で、やっと手に入れる面白さのほうが、大切に思えるのだ。

最近、物欲に振り回されることが多いのだが、このミラーレスデジカメには食指が動かされなかった。 

 

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