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ジュリエッタの秘密 (その9) TCT [ジュリエッタ]

DNAに続いて、ジュリエッタのドライビング性能を支えているのがTCTだ。

欧州でダウンサイジングという小型エンジンにターボの組み合わせが流行りと書いたが、このTCTという、クラッチを2つ持った自動変速機も、最近の欧州車の流行りだ。欧州ではマニュアル車の人気が根強いが、やはり運転が楽なオートマチック車の数も次第に増えてきている。

初めて自分で買った車はホンダのCIVICでマニュアルミッションだった。ダブルクラッチのような高度なドライビングテクニックを駆使する走り屋ではなかったけれど、それでも坂道でサイドブレーキを使わず、ブレーキを踏んだままでアクセルを踵で軽く押し、クラッチを合わせて発進するくらいのことはできた。そんな細かいテクニックがカッコ良いと思っていた頃もあったのだ。

結婚して家内も運転するようになると、当然ながらオートマ仕様になり、子供も免許はオートマ限定だ。僕自身も、ここ20年はマニュアル車に乗っていないから、今回のジュリエッタも当然オートマを考えていた。もっとも、日本向けのジュリエッタでは、マニュアルはスポーツ仕様のクアドリフォリオのみの設定で、コンペツィオーネではオートマしか選べない。

アルファロメオのTCT「ツイン クラッチ テクノロジー」は、一般的にはDCT「ダブル クラッチ トランスミッション」と呼ばれている。名前の通りクラッチが2つ付いていて、奇数と偶数のギアを別々に動かすことができる。これによって、ギアを切り替える時のタイムラグがほとんどなくなり、スポーティーな運転ができるということらしい。確かに欧州のカタログを見ると、加速時の数字はマニュアル車よりも速い。

また、TCTでは通常の乾式クラッチを使いながらも、その操作はコンピュータが自動で行う。オートマで慣れてしまった「クリープ」という、ブレーキペダルから足を離すとアイドリングでもゆっくりと前に進む現象も、コンピュータ制御で半クラッチにすることで実現しているから、初めて乗った人だと、普通のトルコンのオートマ車との区別はつかない。もちろん、チェンジレバーをDから左に倒せばマニュアルモードになって、自分でギアを選んで運転することもできる。コンペツィオーネだとハンドルの近くにギアを選択する「パドルシフト」も付いているから、ハンドルから手を離さずにギアチェンジができる。

オートマでありながら、限りなくマニュアル車に近い、と言うか、マニュアル車から左足のクラッチ操作だけを取り除いたのがTCTと考えるのが分かりやすい。マニュアル車のようにエンジンの回転数と車速感が一致するのもTCTの魅力で、慣れてくるとアクセルやブレーキのペダルワークでシフトチェンジできる面白さもあるのだ。

しかも、このTCT、以前にも書いたが、なかなか頭がよろしい。運転者の意図をよく理解して、適切なギアを選んでくれるし、特に山道の下りでむやみにシフトアップせずにエンジンブレーキを効かせてくれるのがありがたい。シフトダウンする時に、「フォン!」とエンジンを吹かせてブリッピングしてくれるあたり、何ともスポーツカーに乗ってると実感できる瞬間なのだ。

街中で1速から2速にシフトアップする時に、ややギクシャクすることもあるが、まあ、ご愛敬だ。

何となく「じゃじゃ馬慣らし」のような感じをドライバーに与えるのも、アルファロメオなりの味付け、「fan to drive」なのだ。

と思うことにしている。

 

TCT.jpg