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ジュリエッタの秘密 (その8) DNA [ジュリエッタ]

外回りが一段落したところで、次はエンジン回り、駆動系の秘密です。

このところの自動車技術の大きな流れは、省燃費と安全です。前者を実現するには、幾つかのアプローチがありますが、欧州車のそれは、「ダウンサイジング」です。日本車はハイブリッド、アメリカ車は電気自動車を模索する中で、欧州車は一貫して、どのメーカーもエンジンを小型化して省エネを実現しようとしています。

ジュリエッタも、エンジン排気量は1.4リットルで、それで1.4トンの車体を引っ張ります。オデッセイのエンジンは2.2リットルで1.6トン。数字からだけ見るとオデッセイのほうが重量比で大きなエンジンを積んでスポーティーに走れそうですが、実際のところ、ドライビング感覚は全然違います。それにはエンジンや車重だけでなく、ホイルベースやトランスミッション、ハンドリングなど、他の要素も大きく関係しているのですが、実はエンジンスペックだけを比べてみても、ジュリエッタに分があることが分かります。

ジュリエッタのエンジン出力は、170馬力、最大トルクは23.5kgmですが、オデッセイのそれは、160馬力で22.2kgmと、ジュリエッタが勝っています。しかも最大トルクを発生する回転数は、ジュリエッタの2250rpmに対し、オデッセイは4500rpmで、普段使う2000~2500rpm域のトルクを比べれば、その差はさらに大きくなります。しかも、後述の「DNA」からDというスポーツモードを選ぶと、最大トルクが25.5kgmまで跳ね上がります。これで車体重量が200kgも軽いのだから、ジュリエッタの足が軽快なのは当たり前なのです。

エンジンの排気量が高々1400ccしかないのにパワーが出るのは、もちろんターボチャージャーのおかげです。ターボチャージャーでは、エンジンの排気ガスで小さなタービンを回し、その力でエンジンが吸い込む空気を圧縮して、よりたくさんの空気を押し込むことができます。どのくらい押し込めるかは圧縮比で決まりますが、たとえば圧縮比が1だと、1400ccのエンジンが2800ccのノーマルエンジンと同等となります。ジュリエッタの圧縮比は、おそらく0.75くらいなので、2500ccクラスのエンジンを積んでいることになります。

アイドリングや街中の走行時は、小さいエンジンのメリットを生かして燃費を稼ぎ、一方、高速道路や坂道で力を出したい時には、ターボで大きいエンジン並みの力を絞りだすという、良いとこ取りの思想です。アウトバーンというスピード制限のない高速道路があって、長距離を高速で移動することが多い欧州ならではの考え方です。

そして、そうした車の運転状況の違いに合わせて、エンジン以外のミッションやハンドルなどもアクティブにコントロールしようというのが、「DNA」システムです。DはDynanic、NはNormal、AはAll weatherの略で、センターコンソールにあるスイッチで、それぞれのモードを選ぶことで、車の運転特性が大きく変わります。

実際のところ、NとAでは、体感できるような違いはありませんが、雨や雪道など滑りやすい路面ではAモードにすることでスリップしにくく、マイルドな運転になるそうです。確かに2月の十ノ原では、Aにしていて、発進時にタイヤがスリップすることはありませんでした。

一方DynamicモードのDを選ぶと、明らかに違う車に乗っている感じになります。時速110km以下であれば、運転中にも切り替えることができるため、一般道で走行中に切り替えてみると、「バンッ」とエンジンの回転数が上がって、元気一杯のきびきびした走りモードになります。信号待ちからの発進では、むやみにアクセルを踏み込むと、シフトアップしないでエンジンが4000rpm以上まで回ってしまいますし、あわててアクセルを戻すと、今度は急なエンジンブレーキがかかって、ギクシャクした、まるで初心者のような運転になってしまいます。

やはりDモードは高速道路で使うのが一番で、合流や車線変更でも十分なパワーで走ることができます。同時にハンドルも重くなって、フラフラせずに直進性が向上するのも有難いところです。

こうした「車を操る」感覚は、トヨタさんが言うところの「Fun to Drive」そのもので、つくづく「上手な車作りだなぁ」と思わせる、ジュリエッタの秘密です。

 

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