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都会の昼食(41) 京橋 松輪 [都会の昼食]

自動車運転免許の更新のために、午前中の有給休暇を申請した日は、11時過ぎに東京駅に到着した。せっかくお休みをもらっているのだから、昼食は普段は行けない店にしようと、京橋の「松輪」さんに行くことにした。

ここは、以前テレビで紹介されてから凄い人気で、昼時には、いつも長い行列が出来ている。しかもランチは数量限定なので、早い時間から並ばないと、難しそうだ。開店は12時だから、11時半までに並べれば、有名なランチにありつけるだろう。ここ「松輪」さんのランチは、「アジフライ定食」1,200円のみで、数があれば、お刺身の漬けの小鉢300円が追加できる。

すでに15人ほどの列に並んでいると、知らないおじさんが近寄ってきた。ちょっと小林旭さん似で、髪をスポーツ刈りにしている。

「ここってさぁ、一品しかない店かい」

「ええ、そうです。アジフライだけみたいです」

「向こうから見たら、いっぱい並んでるからさぁ。きっとあれだと思ってさぁ。テレビでやってた店だろ。ここのサバが美味いらしいんだ」

「はぁ」

「並んだら、食えるかなぁ」

「まだ大丈夫だと思いますよ」

「サバだよ」

「いや、それはだめだと思いますよ。アジフライだけですから」

「だよなぁ、邪魔したな」

サラリーマン風ではなかったから、何かの用事で東京まで来た人かもしれない。色んな人がいる。

しばらくすると、店員さんが人数の確認に来た。一緒に席への通し方も確認しているようだ。たいていの人はお一人様で、2-3人の組が1つか、2つ。4-5人が女性だ。

11時半になると、列が動き出した。すでに僕の後ろにも10人位が並んでいる。

狭い階段を下りて店内に入ると、奥から順番に、指示された席に座ってゆく。カウンターはお一人様、2人以上だと4-6人のテーブル席になる。もちろん、相席だ。5-6人が座ったところで、順番に注文を確認する。と言ってもメニューはアジフライ定食だけなので、漬けの小鉢を追加するかどうかだけだ。見ていると、半分くらいの人が小鉢を注文している。

席について、しばらくしてから、最初のお客さんにアジフライ定食が運ばれて来た。揚げたてを出すから、一回に4-5人ずつだ。席について待つこと10分。いよいよ順番が回ってきた。

ご対面だ。

アジフライは思ったよりも小ぶりで、上品な大きさだ。大根おろしにワサビが載って添えられている。他には冷奴に漬物、お味噌汁とご飯。そして追加した漬け小鉢だ。漬けのお刺身は色々あるようで、前に座ったOLさんのものとは、少し違う。僕のはハマチと中トロだった。

ここのアジフライはお醤油で頂くのが定番で、テーブルには手順も書いてある。アジフライの上に大根おろしとワサビを載せて、さらに醤油を少したらしてから、かぶりつくようにとある。周りを見ると、常連さんのような人が大根おろしに醤油をかけて、ワサビとざっと混ぜてからアジフライの上に載せて食べている。なるほど、そっちのほうが手間がない。

で、頂きました。

アジは肉厚で、何より、ふっくらと柔らかく揚がっている。もちろん衣はパリッとして、大根おろしにワサビ醤油と良く合う。アジを三枚に下ろした中骨もパリッと煎餅のように揚げてある。漬けのお刺身も旨味がのって、こちらも美味しい。さすが人気店だけのことはある。アジは小ぶりかと思ったが、食べ終わってみると、ちょうど良い大きさだった。

もっとも、なるほど一度は食べたい味だが、さすがに小鉢付きで1,500円だと、そうそう通うほどではないかな。

食べ終わって会計を済ませて店を出ると、まだ階段にお客さんが列を作っているが、その列は道路の先までは延びていない。勇んで来たが、これなら12時過ぎに来ても大丈夫だったかもしれない。

ちょっとありがたいような、残念なような、複雑な心境だった。

 

松輪入口.jpg

松輪アジフライ.jpg

松輪食べ方.jpg