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恐れ入谷の鬼子母神 [ぶつぶつ]

男勝りの女性という言葉は、もはや死語かもしれない。

女性が肉食化したというよりは、男性が草食化して、勝る相手が自滅したのだから、女性に非はないのだろうが、今回は、さすがに「恐れ入りました」という、男勝りの女性に遭遇した。

東京近郊の東海道線は通勤路線である。一部の車両に4人掛けのボックス席もあるが、僕が乗るのは横一列のロングシートの車両だ。まだ18時前で、東京駅始発電車だったから、それほどの混雑でもなかったが、僕が座ったドア側のシルバーシートの隅、車両の一番端に、「ドスン」と座って来た女性が居た。

中年のおばさんなら別にどうということもないのだが、ちらっと見ると、30台半ばのきれいなOLさんだ。「丸の内で働いていますわよ」という、それなりのブランドっぽい服装で、ピンではないが、結構お値段の張りそうなヒールを履いている。

見るともなく、左目の視界の端に入れていると、足を組んで、鞄をゴソゴソとやって、何かを取り出そうとしている。携帯だろうか。ここはシルバーシートだが、最近はお年寄りでもお構いなしの人もいるし、まあ、僕も使わないまでも電源を切らずに持っているから、、、、。

で、手元の京極夏彦さんの「西巷説百物語」に目を戻して読みだした途端、「プシュッ」と音がした。横を見ると、なんとロング缶のビールをぐいっと飲んでいる。

確かに東海道線の通勤電車でも、夕方になると缶ビールや缶チューハイを開ける、ふざけたおじさんが居ることは居るのだが、そこそこの年齢の女性とは恐れ入った。しかも、おじさんなら、そのたしなみで白いビニール袋や鞄の中に隠しながら飲むのだが、彼女は隠すでもなく、ロング缶を堂々と膝の上に載せているのだ。

さすがにおつまみを摘みだすことはなかったが、次に取り出したのはスマートフォンだ。シルバーシートに座り、組んだ長い脚がドアを開けて通る人にかかっていてもお構いなしで、ビールを左手に、右手で器用に携帯を操っている。

恐れ入りました。

適当な写真がないかとWebで探したのだけれど、下の写真しか見つからなかった。

これは「桂 三風」さんのブログの「さん風のたより」で「女性らしさ」について書かれたページから拝借したものだ。三風さんは、大阪環状線の車内で女性が缶ビールを片手にしていることを嘆いているのだが、

「三風さん、東京はごっつ、違いまっせ。ハイヒールにブランドもんの服着てなぁ、シルバーシートに座って、脚組んでぇ、ロング缶に、携帯でっせぇ。」

と、変な関西弁で注進したくなるような光景だった。

寅さんなら、「恐れ入谷の鬼子母神」と言うところか。

 

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