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白い巨塔 [ぶつぶつ]

先々週から先週にかけて、テレ朝の開局60周年記念で、山崎豊子原作の「白い巨塔」をやっていました。

長男が好きなこともあって、全五話を録画し、日曜日に第一話を見てみたのですが、どうも違和感があって、思わず15年前にTVドラマ化した際のビデオを見返してしまいました。

今回は、主演の「財前五郎」が岡田准一、「里見脩二」が松山ケンイチ、「東教授」が寺尾聡、財前の愛人の「花森ケイ子」が沢尻エリカ、財前の義父が「小林薫」といった面目で、なかなか見事な俳優陣をそろえています。

一方、見直したというビデオは2003年から2004年のフジテレビ開局45周年記念作品で、こちらは財前が唐沢寿明、里見が江口洋介、東教授が石坂浩二、花森ケイ子が黒木瞳、財前の義父が西田敏行といったところ。やはり大御所も含めて、素晴らしい俳優の面々が名を連ねています。

両方の第一話を見直してみて、なんとなく違和感の出どころが分かってきました。それは時代設定です。

原作は1965年と50年以上も前ですが、それぞれドラマ化する時代に設定を置き直しているため、今回の2019年ドラマでは財前五郎が最初に腕を振るう手術がAIを活用した腹腔鏡手術という設定になっていました。一方、2003年の際には、唐沢君がクラッシックに合わせて手を振り、手術の手順をイメージトレーニングしていて、外科医として並外れた技術を持っているところが想像される重要なシーンになっています。医は仁術で、やはり医者は自らの手をつかって問診したり処置をしたりと職人としての高い技術があって然るべきです。技術や装置の進歩に加えて、診断もAIがやるようになる時代だと、医者としての素晴らしさを演技で表現するのが難しく、その結果、現代版では演技やセリフが上滑りしてしまっていたような印象です。それは財前五郎だけでなく、周囲の面々、あるいは愛人の花森ケイ子に至っても、そんな印象でした。無理して役を作っているような。

実はこの「白い巨塔」は、1978年に田宮二郎主演でTVドラマ化されており、確か大学2年、スキーサークルの冬合宿に行っている時に、草津のホテルで田宮二郎の猟銃自殺のニュースを見て驚いた記憶があります。この自殺後にドラマの放送があり、最終回は30%超えの大ヒットになったのだそうです。このTVドラマの場面そのものは記憶にないのですが、その時に里見役を演じた山本學が2004年のドラマを見て「今回のは演技が大げさすぎる」と評したと知り、同じような印象を持たれていたのではと思いました。まあ良く見てみると、2004年のドラマでもPCでメールを見るシーンや携帯電話が出てきていたりして、時代が進むにつれてその時の技術やトレンドを取り入れざるを得ず、医者そのものの姿の描き方が難しくなっているのかもしれません。

白い巨塔は有名な作品ですし、何度も映画やTVドラマ化されています。それをどうして今回リメイクすることになったのか、まだ全五話を見ていないので何とも言えませんが、現代なりの解釈や問題提起が感じられればいいなあと思っています。

浪速大の教授陣の一人を初めて女性に設定したそうですが、そんなことで現代風にしましたと言われてもねぇ。


白い巨塔文庫.jpg

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