今年の富士山は? [ぶつぶつ]
今年の富士山登山は、七合目まで来たものの、強風のため断念となった。
さすがに厳しい日本一の山、そうそう簡単には登頂させてくれないということだ。下り際に何度も見上げた富士山は最後までその頂点を見せてはくれなかった。
朝のスタートは順調だった。初参加のEG君は前日の夜9時から車中泊、僕も1時に横浜の自宅を出発して2時45分には須走口の臨時駐車場に到着し、4時の集合時刻を待った。到着時は曇り、時折霧雨のような細かい雨が降るものの、数分で上がるような天気だった。富士山を見上げるとヘッドライトをつけた登山者が尾根を登っていく灯りがゆらゆらと見える。
須走口の駐車場は、以前より少し西側に移動し、バスやタクシーの折り返し施設や水洗トイレも完備になっていた。深夜の工事現場のように煌々と照明が点き、見回りの警備員も巡回するなど、車を預けても安心できる施設になっていた。もっともそのおかげでEG君は寝不足だったらしい。
去年はタクシーの列に出遅れてしまったが、今年は4時にはタクシー乗り場に行き、10分ほどでシャトルタクシーに乗ることができた。須走口五合目まで約30分で4530円。一人あたり1500円だから、シャトルバスの1190円と大差ない。
須走口の天気は晴れ、雲間に青空も覗き、それほど悪い天気には見えなかった。スタートは4時45分、今年も体を高地に慣らすため、小富士まで20分ほど歩く。小富士でおにぎりを頬張り、小休止してから須走口の登山道まで戻ってきたのが5時45分、ちょうど1時間だ。この1時間を五合目で過ごすことの重要性は去年経験済みだ。高山病予防もだが、それほど斜度はなくとも、足元が不安定な小富士までの道を往復することで体もほぐれて、準備体操代わりになる。
いよいよ、5時45分にスタートだ。五合目から六合目までの林間コースは去年とあまり変わらないが、去年より下山してくる人が多かった。今から思えば、登頂を断念して、途中で引き返してくる人が多かったせいなのだろう。去年よりも1ヶ月早いせいか、道端の野草もまだ花をつけていない。唯一今回見れた花は六合目手前の一箇所だけだった。ヘビイチゴの仲間だろうか。
六合目から上は、次第に風が出てきて、それでも海抜2700mの本六合目までは、去年とそれほど変わった感じはしなかったのだ。時折雨が降るので、ヤッケは羽織ったが、気温もそれほど低いわけではなかった。写真を見ても、手袋もしていない。
状況が一変したのは、本六合目を出発した直後からだ。山から吹き降ろす風が強くなり、登りの斜度と相まって、足を前に出すのが、かなり厳しい。つづれ折りの登山道の向きによっては風に煽られる向きが変わるので、登山道から足を踏み外さないよう、慎重に足場を選んで登って行く。時折、突風のように激しい風が吹きつけるので、多少でも風を防げる岩陰で休んでいる人がいる。
途中で振り返って見ると、きれいに山中湖が見えるが、空にはたくさんの雲が上に下に、出来てはすぐに消えながら流れている。上下に動く雲を真横から見るのは初めてだった。
何とか七合目に着くと、みな山小屋を背に地面に腰掛け、風から身を守っている。目や鼻、口の中にも砂が入り込んでくる。FJ君が山小屋の中で休もうという。中に入るだけで1時間で1050円だが、屋外で風を除ける場所もなく、休憩することにした。
太陽館のお上さんは、もう何十年も勤めている山小屋のプロだ。普段は須走に住んでいるそうだが、夏の山開きの間は太陽館を切盛りしている。おばさんによると、今日は多少風が弱まっても、収まることはないだろうとのことだった。この時期は、九州で大雨が降ると翌日か翌々日には富士山の天気は荒れ模様になり、 本州に前線がかかるような天気だと、まず山頂は大荒れだそうだ。本当に穏やかに晴れるのは、梅雨が明けて、台風が来るまでの、極わずかの間しかないということだ。
天気予報だと午後からは富士山でも晴れるとなっていたが、おばさんの話を聞いて、今回は登頂を諦めることにした。これから先はさらに風が強くなるだろうし、斜度も上がる。危険を犯してまで登る必要はないのだ。また来れば良い。
下りは来た道を引き返し、六合目から下は、本来の下山ルートの砂走りコースに合流し、砂払い五合の吉野家さんの前を通って、須走口五合目まで戻ってきた。到着は11時45分、スタートからちょうど6時間だ。七合目に着いたのが8時45分だったから、登りに3時間、小一時間休んで、下りに2時間というところだ。
その後、タクシーを呼んで駐車場まで戻り、御殿場の市営温泉で汗と砂を流し、解散したのが14時30分。自宅に戻ったのが16時30分だった。
長いような、短いような、一日だった。何はともあれ、FJ君、EG君、ご苦労様でした。おかげさまで、怪我もなく、下山できました。
FJ君とは、何とか今年リベンジしようと話をしているが、8月中旬までは予定が合わず、その後は台風や秋雨の影響が出てくる。日が短くなってくるのも心配だ。
さすがに、天下の名峰、富士山。早々簡単には山頂からの景色は拝ませてくれないということか。
去年初めての富士山登山で登頂できたのは、実はビギナーズラックだったのかもしれない。
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