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リペアショップのおやじさん [ぶつぶつ]

靴の踵が減ってくると持ち込むリペアショップがある。

駅ビルの地下1F、スーパーの脇に、こじんまりとある店だ。都心の繁華街に行けば、踵の修理なんて、大手のチェーン店がそこかしこにあるから、別に気がついた時に直せば良いのだが、ここ数年は、いつもここにお願いしている。

何と言うか、腕が良いのだ。

腕が良いといっても、踵のゴムを張り替えるだけだから、履き心地が良くなるとか、見た目がきれいとか、そういうことではない。手順、手際が良くて、「さすが職人さんだなぁ」と、作業に見とれてしまうのだ。

その店は、店長のおやじさんと、若い職人さんの2人でやっている。若い人は、以前は、確か別の人だった。今の人は、若いといっても手際が良いから、別の店から移って来た「渡りの職人さん」なのかもしれない。

無造作に他人の履いてきた靴を素手で掴み、踵や先端の減り具合、傷などを指で触りながら確認していく。靴の臭いや、靴底の汚れなんて、気にもしない。状態によっては、踵だけでなく、先端の補修も勧めてくれるが、無駄な直しで工賃を上げるなんてことは考えていない。一度、靴底の見えないところに傷がついていて、「踵を直しても水が入るから、やめといた方が良いよ」と戻されたこともあった。

状況を見ながら、どうやって踵をはがして、どの部品をどう貼るか、釘を使うか、接着剤を乾かす時間、色合わせや磨きまで、頭の中で手順を組み立てているのだろう。決めれば、後はさっさと作業が進む。2人とも手が空いている場合は、会話することもなく、あうんの呼吸で、共同作業になる。狭い店内だから、相手が次に使う工具を取ってあげながらも、自分の手は休めない。見ていて気持ちが良いのだ。

左右の踵を張り替えて、2,200円。材料費は100円もしないだろうから、ほとんどが工賃だろう。でも、場所代に電気代、設備償却もあるだろうから、手元に残るのは半分の1,000円くらいか。1日に30人のお客が来るとして30,000円。おやじさんが18,000円で職人さんが12,000円か。月に25日働いて、45万円と30万円。他にも鍵のコピーとか傘の修理、ちょっとした小物の販売もあるが、まあ、こんなものだろう。

仕事の価値をお金に換算してはいけないのかもしれないけど、お気楽なサラリーマンより、よっぽど大変な仕事だ。

でも、自分の持っている技術で、お客さんの困っていることをその場で直してあげるというのは、それなりに満足感のある仕事なのかもしれない。

なんてことをつらつらと考えているうちに、修理は終わった。

 

こっぽり.jpg


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