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安全な車 [ぶつぶつ]

このところ車にまつわる悲惨な事故が多い。 

無免許の未成年者が、居眠り運転で登校中の小学生をはね飛ばして殺しても、一晩中運転できたから運転能力に問題なく危険運転致死傷罪にあたらないという、なんとも理解できない法律の問題は別として、そもそも事故を起こさない安全な車があれば良いのに、なぜできないのだろう。自動車会社は走行性能なんかよりも、もっとそっちに英知を絞るべきではないのかというのが、一般の人の思いだろう。

世の中のそんな声に応えてか、最近スバルの「アイサイト」という、運転支援システムのコマーシャルを良く見かける。

「アイサイト」は、フロントガラスに取り付けた2つのカメラで前方の映像を三次元分析し、前方の車や歩行者、障害物を感知して、危険があれば減速・停止するというものだ。正しくは「新型アイサイト」で二代目だそうだが、前の車に接近すると衝突しないようにブレーキをかけてくれるし、渋滞の道路で、前の車に一定の距離で追尾する機能も持っている。

さらに調べてみると、この技術は、センターラインや歩道も認識することが出来て、電動ステアリングと組み合わせれば自動ハンドルまで可能だという。たぶん高速道路だったら両手両足なしで自動走行することだってできるはずだ。

なんだ、すごいじゃないか。 

車が発明されて125年、T型フォードと言われる、現在の自動車の原型が世に出てからでも、100年以上も経つのに、基本的な仕組みは何も変わっていない。動力源があって、アクセルで動く。4つの車輪があり、ハンドルで左右に向きを変える。ブレーキで停止する。それだけのことだ。

そして、この100年間に自動車会社がこぞってやってきたことは、走行性能を上げ、燃費を改善し、快適性を上げることだ。そのおかげで、軽自動車でも高速道路を120km/hですっ飛ばせるようになった。ガソリン1リットルで30kmも走れるし、坂道発進や縦列駐車で苦労することもなくなった。地図をハンドルの上に広げて道を探したのは大昔の話だ。もちろん、エアバックとか、アンチロックブレーキとか、安全技術の進歩もあるが、それらは事故が起こった時のダメージを軽くするためのもので、本質的に「事故を起こさない車」の技術とは違う。

実はどの自動車会社も、そんなことは当然考えていて、前述のスバルだけでなく、トヨタも日産もホンダも、すでに同様の技術を開発済みなのだそうだ。それがあったら、アホな輩が居眠り運転をしても、あるいは、病気の発作で意識を失ったとしても、小学生を何人も殺すなんてことは起きないのに、なぜ、そうした安全技術が搭載されないのか。

その理由は、国道交通省が通達としている技術指針を見ると分る。そこにはこう書いてあるのだ。

「危険回避システムを自動車に適用する場合には、ドライバーに過信を与えない範囲に限定する」

要するに、安全になりすぎてドライバーが安全運転の意識を忘れるような車は作ってはいけませんよ、ということだ。

なるほどという気もしないではないが、良く考えてみると、ちょっと変だ。 

どんどん安全な車にしていくと、ドライバーは危険に対して鈍感になる。これは本質ではあるけれど、だから安全な車を作ってはいけないというのは、変な話だ。本末転倒じゃないのか。

「ナイフは危ないので、切れ味をほどほどに抑えなさい」と言っているようなものだろう。

だいたい、病気で意識を失ったドライバーに安全の過信も何もない。安全な車のレベルに制限を加えるのではなく、ドライバーが正常な状態で運転できているかどうかに制限を加えるのが、正しいはずだ。意識が正常に働いていれば、スピードを出し過ぎたり、無理なハンドリングをしたり、ましてや飲酒運転したり、居眠り運転などしない。

たとえば、ハンドルの近くにドライバーの呼気のアルコール濃度を検知してエンジンが起動できなくなるシステムとか、ドライバーの瞼や瞳孔の動きから居眠りを感知してアラームを出すシステムとか、開発が進んでいるはずだ。誤動作対策など、まだ課題があるようだが、そうしたドライバーの意識を担保する技術と組み合わせれば、究極の安全運転支援システムだって問題ないだろう。

最近の薬物使用などを考えると、ハンドルを持つと、映画の「ガタカ」にあったように、指先から採血されてエンジン起動が制御されるようなことになるのかしらん。

あと何年したら、そうした自動車側から監視されながらも、自由に安全に楽ちんに運転できる車ができるのだろう。

やっぱり、自動運転の車がそこいらを走り回るようになっても、運転席でドライバーがいびきをかいている光景は見たくないものだ。 

 

アイサイト.jpg

1908年フォードT.jpg 


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